特徴
FEATURE
1. だれでも
PIUSは、⾃動⾞の持つ基本性能をそのままに、
部品点数を極⼒減らしだれでもが組み⽴てられます
2. 学べる
作って楽しい、乗って楽しい、そんな「楽しい」を通して
⾃動⾞の基本構成を学ぶことができます
3. 体験する
PIUSを通して、モノづくりの想いや、
組⽴てる楽しさを体験してもらえれば幸いです
教材基本システム構成
実習に必要な機材が⼀式揃っています。(軍⼿などの消耗品は除きます)
PIUS⾞両本体
分解/組⽴マニュアル(A4)
作業マット/部品マット
⼯具セット
リジットラック
アルミジャッキ
充電器
教材オプション
Advanced Kit(アドバンスキット)
本キットを⽤いることで、⾞両設計の重要性を、それぞれの基本構造、メリット/デメリットの理解を測ります。
これにより、商品開発や⾞両計画、技術開発⼒を養えます。
また組換えキットによっては、基本教材のPIUS⾞両本体以外に、
専⽤⾞体(PIUS48V)が必要となります。
教科書「PIUSにみる⾞両⼯学概論」
(B5)インホイールモーター
コンバージョンキットブラシレスモーター
コンバージョンキットタイヤ&ホイール
コンバージョンキットダンパー
コンバージョンキットアライメント調整キット
ギヤ⽐変更キット
Visualization(⾒える化教材)
ギヤ(トランスミッション
カットモデル)ステアリングカットモデル
インホイールモーター
構造モデルDCブラシレスモーター
カットモデル⾼電圧マルチテスター
(BOSCH製FSA050)
その他オプション
新型コロナ感染予防対策用パーテーション
新型コロナ感染予防マニュアル
PIUS⾞両について
主要諸元表
駆動形式 | ギヤー減速式後輪駆動 | |
---|---|---|
⼨法・重量 | 全⻑/全幅/全⾼(mm) | 2500/1230/885 |
ホイールベース(mm) | 1500 | |
トレッド FR/RR(mm) | 1130/920 | |
最低地上⾼(mm) | 120 | |
⾞両重量(kg) | 220 | |
乗⾞定員(名) | 1 | |
性能 | 最⼩回転半径(m) | 3.4 |
⼀充電⾛⾏距離(km) | 25 | |
原動機 | 種類 | 直流モーター |
定格出⼒(kW) | 0.6 | |
駆動⽤バッテリー | 種類 | 鉛電池 |
電圧(V) | 36 | |
電池容量(Ah) | 38 | |
⾛⾏装置 | サスペンション形式 前/後 | ダブルウィッシュボーン/リジットアクスル |
主ブレーキ形式 前/後 | ディスク/ディスク | |
タイヤサイズ 前/後 | 3.00-10 |
主な構成部品
01.メインフレームアセンブリー
メインフレームは、⾞体を構成する部品のなかで核となる部品です。
原動機(モ―ター)や減速機などの駆動系部品、バッテリー、サスペンションやタイヤ、舵取り装置などを取り付ける構造が必要です。
⾞両が安全に⾛り、曲がり、⽌まるために、フレームにかかる⼒を受け⽌める強度が必要です。⼈が乗⾞し、安全・快適に運転するための空間も必要です。
この他にも様々な機能性を満たしつつ、造りやすさなどの⽣産性や、コストなどの経済性も同時に考慮しなければなりません。
クルマの⾞体構造を⼤別すると、モノコック構造とフレーム構造に分けられますが、PIUSのメインフレームでは、⼀般構造⽤鋼管を溶接で組み⽴てた、スペースフレーム構造を採⽤しています。
様々な部品の搭載性に⾃由度が⾼く軽量、少量⽣産でも安価で製造も⽐較的容易、などのメリットがあるからです。
このように、部品のひとつひとつの構造や材質には、訳があるのです。
専⾨⽤語がたくさん出てきてとまどったかもしれませんが、これから、PIUSを構成する各部品について、詳しく解説していきたいと思います。
02.フロントサスペンションロワーアーム
サスペンションとは、⾞体とタイヤとを連結する部品です。
⾞体に対しタイヤを、前後・左右⽅向には⼤きく動かないよう(適度な剛性で)保持しています。
これは、クルマが⾛⾏することで発⽣する⼒に対して、タイヤと⾞体がしっかりと連結されていないと、クルマが左右にふらつくなどして不安定になるからです。
ただし、⾞体に対しタイヤを、上下⽅向にはバネを介して保持することで柔軟に動くようにしています。これは、路⾯の凸凹による振動を吸収するとともに、クルマの安定性を確保する⽬的も持たせているからです。
サスペンションには、様々なタイプのものがありますが、PIUSのフロントサスペンションでは、上下⼀対のアームにより⾞体とタイヤを連結する⽅式(ダブルウィッシュボーン式という)を採⽤しています。この上下のアームの、上側に位置するものがアッパーアーム、下側がロワーアームとなります。
PIUSのロワーアームにはバネが取り付けられており、⾞体とタイヤを連結する役割に加え、バネによって保持されている⾞体の重量(バネ上重量という)を⽀える役割も担っています。さらに、このロワーアームには、⾛⾏時の振動による負荷も加算されます。
このサスペンションロワーアームを考える場合、⾞体とタイヤを連結するという機能性と、⼤きな負荷と振動にも耐える強度を持ち、⽣産のしやすさやコストなど、多くの要素を考慮する必要がありますので、⾮常に複雑な部品形状になりがちです。
そこでPIUSでは、鋳造(⾼温で溶かした⾦属を型に流し込んで冷やして固めることで部品をかたちづくる。複雑な形状の部品でも容易につくれるという⻑所がある)という⽅法で、ロワーアームを製造しています。
03.フロントサスペンションアッパーアーム
ロワーアームの相棒であるアッパーアームは、同じアームという部品であっても、ロワーアームとは役割が一部異なるので、見た目の形状や材質も異なっています。
「車体とタイヤとを連結する」という役割は同じですが、PIUSではロワーアームにバネが取り付けられて車体重量を支える役割も担っていましたが、アッパーアームにはその役割がありません。
PIUSのアッパーアームは、「車体とタイヤとを連結する」という役割を主に担っています。
「車体とタイヤとを連結する」ために必要な強度は要求されますが、車体重量を支える必要がない分、(その役割を担っている)ロワーアームほどの強度は必要ないので、見た目もスリムな形状になっています。
アッパーアームは、厚さ2mmの鋼板を曲げ加工し、溶接で組み立てられています。
2mmというととても薄くてペラペラな印象ですが、曲げ加工により形状を工夫することで必要な負荷に耐えられるようにしています。
04.フロントナックル
ナックルとは、上下のサスペンションアームの間に、ボールジョイントを介して取り付けられている部品です。
ナックルには、ハブという部品(回転する部品)がとりつけられており、ハブにはタイヤが取り付けられています。クルマが走行すればタイヤは回転しますが、停止したいときにはタイヤの回転を止める(ブレーキをかける)必要があります。このブレーキ装置もナックルに取り付けられています。
さらにナックルには、ナックルアームという部位があり、ここには舵取り装置が取り付けられていて、クルマのハンドルをまわしたときの力がここに伝わってタイヤの向きを変えています。
このように、ナックルの役割は、上下サスペンションアームとタイヤを連結すること、ブレーキ装置にかかる力(ブレーキ力による反力)を受け止めること、タイヤの向きを変えること、それに加えて、車体重量を支える(車体重量を、バネ→ロワーアーム→ナックル→タイヤ→地面、へと伝える)ことなど、大変多くの役割を担っています。
ナックルという部品の構造を考える場合、ロワーアームと同様に、機能性・強度・生産性・コストなど、多くの要素を考慮する必要があります。
そこでPIUSのナックルは、ロワーアームと同様に鋳造によって製造しています。
ちなみに、ナックルとは「指の関節」という意味です。
※ボールジョイント
金属の丸い球に棒を付けたスタッドとそれを包み込むソケットで構成され、任意の方向に回転可能な継手で、人でいえば関節のようなしくみです。
05.ダンパー
ダンパー(ショックアブソーバー)とは、緩衝材のことです。
クルマが凸凹道を走行したときに、車体に上下に衝撃が加わります。この衝撃は、サスペンションに取り付けられたバネで一旦吸収しますが、バネは縮んだり伸びたり繰り返し振動するためにクルマの走行安定性や乗り心地が損なわれます。そこで、バネと並んでサスペンションに取り付けられたダンパーが振動のエネルギーを吸収することで、車体の上下振動を抑制し、走行安定性や乗り心地を確保します。
ダンパーが振動を抑制する力を「減衰力」と呼びます。この減衰力は、ダンパー内部のシリンダに満たされたオイルの中をピストンが通過することで発生します。ピストンの中にはバルブがあり、このバルブをオイルが通過する時に圧力差が発生し、これが減衰力となるのです。
減衰力は、オイルの粘性(粘度が大きいほど減衰力は大きくなる)とバルブの形状(オイルが通過しにくいほど減衰力は大きくなる)により、クルマの特性に合わせて設定することができます。
PIUSではスクーター用のダンパーを流用していますが、これはPIUSの1輪当たりのばね荷重に見合うバネと、それにベストマッチするダンパーを、数ある中から選定しています。
06.アンチロールバー
アンチロールバーは、スタビライザーとも呼ばれ、クルマがカーブを曲がるときにロール(遠心力によってクルマが左右方向に傾く現象)を適度に抑制し、操縦安定性や乗り心地を向上するための部品です。
この部品を見てみると、丸い棒が「コの字」のような形に曲げられた形状をしており、コの字の中央部は車体に取り付けられ、両端はフロントサスペンションロワーアームに取り付けられています。片方のロワーアームが動くと、その動きはアンチロールバーに伝わり、もう一方のロワーアームを動かそうとします。
左右のロワーアームが同じ動きをするとき(例えば、左右のタイヤが同時に凹凸を乗り越えた場合など)は、アンチロールバーはロワーアームと一緒に動く(車両の上下方向に揺動する)だけです。この時、アンチロールバーは何の効果も発揮していません。
片方のロワーアームが上方へ、一方が下方へ動く場合(例えば、クルマがカーブを曲がるときにはこのような動きになる)、アンチロールバーの中央部は「捩じられる」状態となります。この時、捩じりにより蓄えた力が、ロールを抑えて安定させます。
さて、アンチロールバーは、クルマがカーブを曲がるときにロールを適度に抑制する、と冒頭に書きました。ロールを抑制するならば、わざわざアンチロールバーを使わずに、バネを固いものにするという方法もあります。しかしこれでは乗り心地が悪くなってしまします。
また、乗り心地だけを優先して、柔らかいバネを使うと、カーブを曲がるときにロールが大きくなり過ぎて操縦安定性が損なわれる危険があります。
これら2つの課題を両立する方法として考えられたものが、アンチロールバーなのです。
乗り心地を優先した柔らかいバネでも、カーブを曲がるときにはアンチロールバーの捩じり力がバネの硬さに加算され(バネを固くしたのと同様の効果となり)ロールを抑制するのです。
ちなみに、左右のロワーアームが同じ動きをする時は、アンチロールバーは効果を発揮しない・・と書きましたが、PIUSのアンチロールバーではアンチロールバー以外の役割も与えて、部品を効率よく機能させています。
それは、サスペンションロワーアームの一部としての機能です。
サスペンションロワーアームには、車体に対しタイヤを、前後・左右方向には大きく動かないよう(適度な剛性で)保持する役割が求められますが、左右方向の保持機能を主にロワーアームが担い、前後方向の保持機能をアンチロールバーに任せる(アンチロールバーにロワーアームの一部の機能を持たせる)ことで、サスペンションロワーアームの機能を一部省略でき、ロワーアーム形状を単純化することでコスト削減や軽量化を図っています。
07.リヤスイングアーム
リヤスイングアームは、リヤサスペンションアセンブリーと車体とを連結する部品で、V字の形をしています。
リヤサスペンションの両サイドにある薄い板状のアームは、上下方向には自由にスイングしつつ、車体に対してタイヤの前後方向の位置を保持する役割があります。しかし、左右方向の力がかかった場合に対しては、力を受け止める構造にはなっていないので、タイヤの位置を保持する事はできません。
中央のリヤスイングアームは、上下方向には自由にスイングしつつ、車体に対してタイヤの左右方向の位置を保持し、さらにはリアサスペンションアセンブリーが車体に対してロールを許容する、という役割を持っています。タイヤの前後方向の位置を保持することについては、ある程度の保持力しかありません。(ゴムブッシュの構造を工夫しており、左右方向には固い特性のため位置保持が可能であり、前後方向には柔らかい特性のため位置保持にはある程度の柔軟性をもたせています。)
このように、両サイドの薄い板状アームと、中央のリヤスイングアームとで、役割を分担して、タイヤの位置を保持しつつ、上下方向の動き(スイング)を許容しています。
さて、ではなぜ役割を分担する必要があるのか考えてみましょう。
両サイドの薄いアームが、左右方向の力も受け止められる構造であれば、中央のリヤスイングアームは必要無いかも知れません。PIUSがロールした時を考えてみると、両サイドのアームは、ロール角度分ねじれる必要があります。このため、アームをあえて薄くして「ねじれやすく」しています。また単純な板形状のため、非常に低コストとなります。
ただし、薄い板ですと、曲げ方向の力(つまり、左右方向の力)に対し、弱くなってしまします。
この弱点を補うために、中央のリヤスイングアームが必要となるのです。
08.リヤサスペンションアセンブリー
リヤサスペンションアセンブリーは、駆動系ユニット(モーター・減速機・デファレンシャルギヤなど)と、サスペンションに相当する機能(アクスル、ハブ、ブレーキなど)とが一体となった、部品の集合体です。
ギヤケースの外側には、PIUSの動力源であるモーターが取り付けられており、ギヤケースの内側にある減速ギヤとデファレンシャルギヤに動力が伝達され、デファレンシャルギヤから左右に伸びるドライブシャフトが左右の車輪をそれぞれ回転させます。
ドライブシャフトの回転運動を保持しているのがアクスルです。左右の各アクスルはギヤケースにボルト固定されており、ギヤケースと一体となってリジッドアクスルを形成しています。
09.トルクロッドアセンブリー
トルクロッドアセンブリーは、リヤサスペンションアセンブリーの上端に取り付けられている部品です。
PIUSが走行する時、モーターが発生したトルクは減速機やデファレンシャルギヤを経てドライブシャフト~タイヤに伝わり、路面との間に駆動力を発生します。このときトルクの反力(反対方向の向きのトルク)がタイヤを保持している部分(アクスルであり、アクスルと一体構造となっているリヤサスペンションアセンブリー)に伝わります。この反力で、リヤサスペンションアセンブリーは、アクスルを軸とした回転運動をしようとします。
このままではモーターの回転がタイヤに伝わらずに、リヤサスペンションアセンブリーを回転させることになり、走行することができません。これを抑制するために、回転運動の中心軸となるアクスルから距離が離れた場所に、リヤサスペンションアセンブリーの回転運動を抑える「つっかえ棒」を設けているのです。
「トルクを受け止める棒」なので、トルクロッドです。回転中心軸から距離が離れた場所に設けているのは、てこの原理からなるべく小さな力になるようにであり、そうすることで部品の耐荷重も少なく済むからです。
また、PIUSがブレーキをかけた際も、同様のことが考えられます。
PIUSでは、回転する円盤状のブレーキローターを、ブレーキキャリパーで挟み込むことでブレーキをかけていますが、ブレーキローターの回転力がキャリパーに伝わることで、キャリパーが取り付けられているアクスル(およびそれと一体構造となっているリヤサスペンションアセンブリー)に回転力が伝わり、アクスルを軸としてリヤサスペンションアセンブリーを回転させようとします。
このように、アクセルを踏んだ時とブレーキをかけた時の両方の場面で、トルクロッドはリヤサスペンションアセンブリーの(不要な)回転運動を抑え込む役割を果たしています。
10.ハブ
ハブは車輪の中心部にある部品です。
PIUSのホイールは円盤状ですが、かつてクルマのホイールは、自転車のホイールのように、細い金属製の棒(スポークという)を何本も組み合わせた構造をしていました。スポークに対して、タイヤを取り付ける部分を「リム」と言い、ホイールの中心部にあってスポークを集約している部分を「ハブ」と言います。
ハブとは、物事の中心にあって、それらを集約する役割を持つものですが、PIUSを含む一般的なクルマにおいては、ホイールを取り付ける部分を指します。
ハブの内部にはベアリングがあり、回転しつつ、タイヤからの荷重を支える役割をしています。
11.タイヤ/ホイール
タイヤは車両と地面が接し、車両の動力が最後に伝わる重要な部品です。
一般的な自動車には4本の空気入りタイヤが使用されています。
タイヤにはゴムが用いられ、路面との摩擦により、車両は進んだり、止まったりすることができます。
ゴムでできているので擦り減ったら交換が必要となり、また、空気が充填されているので、空気圧チェックなど定期的なメンテナンスが重要となります。
PIUSのタイヤは10インチの小さめのサイズを採用していますが、これは車両の動力性能に見合ったサイズで十分なタイヤ性能を確保しつつ、重量の低減、乗り心地を確保するとともにメンテンナンスの際も取り扱いが容易となっています。
ホイールは車両からの動力をタイヤに伝えタイヤが転がる際に円形状を保つ部品です。
逆に地面からの振動・衝撃はタイヤを介し車体側に伝わりますので、ホイールの強度は重要になってきます。
PIUSのホイールは2つの部品で構成されボルト・ナットで組み立てられる合わせホイールとなっており、タイヤ交換等のメンテナンス性の向上や強度の確保による安全性を重視したものとなっています。
12.ブレーキペダル
ブレーキペダルは車両の減速や停止(制動)をするための部品のひとつで、ドライバーが足で踏むことにより車両に対し減速、停止させる意思を伝えます。
減速、停止はブレーキペダルを踏む強さ、踏む時間によって調整できます。
ブレーキペダルを踏む→ブレーキシリンダーに液圧が発生する→ブレーキパイプ・ブレーキホースからブレーキキャリパーに伝わる。
このような流れでブレーキキャリパー(後述)に液圧が伝わりブレーキキャリパーが作動します。
また、一般的な自動車の場合、ブレーキペダルを踏むと踏力を補助する倍力装置を介していますがPIUSでは用いていません。
1.0t以上の重量がある自動車と違い、車体が軽量なので弱い踏力でも十分に制動できるためです。
13.ブレーキキャリパー
ブレーキキャリパーは制動装置のひとつです。
ブレーキは摩擦の力で制動する仕組みとなっています。
ブレーキキャリパーは回転するブレーキディスク(後述)を摩擦材によって挟み込み、熱に変換して回転エネルギーを減少させ、車両を制動、停止させる構造です。
ブレーキペダルを踏むことによって発生した液圧はブレーキキャリパーまで達したのち、キャリパーに組み込まれているピストンを押し摩擦材を押します。
ブレーキキャリパーは内部の液圧とブレーキディスクの回転を止める剛性、発生する熱に耐える耐熱性など過酷な条件で使用されるための強度をもった部品です。
PIUSは4輪へアルミ製ブレーキキャリパーを採用し、重量の軽減と強い制動力を確保しより高い安全性を求め設計されています。
14.ブレーキディスク
ブレーキディスクは制動装置に用いられる部品のひとつです。
タイヤ/ホイールの回転エネルギーを減少させるためにブレーキ摩擦材で挟み込む円盤(ディスク)状のもので、制動時は摩擦により熱を発するので熱に強い素材が用いられています。
- ブレーキディスクの大きさは
- ・車両総重量
- ・摩擦材の大きさ、摩擦材の種類
- ・車両の走行速度
- ・タイヤと地面との摩擦の大きさ
これらのバランスによって決まり、闇雲に大きくすればいいというものではありません。
大きすぎる場合は、制動時に急激にタイヤの回転が停止し車両が不安定になります。
逆に小さすぎる場合は、十分な制動が得られなく停止までの距離が伸びるほか、過度に加熱することになり破損等を招くことになります。
PIUSのブレーキディスクは4輪とも同じ大きさのものを使用しています。
これは車両の重量が軽く、ドライバーが座った際にバランスが最適となるように設計されているからです。
15.ステアリングホイール
ハンドルは和製英語で、世界共通ではステアリングホイールといいます。
ドライバーが回転させる事により、進行方向を変える意思を車両に伝えるための部品のひとつです。
車両とドライバーが接する部品の一つであり、運転する際に確実に握っていられるような機能性と華やかなデザイン性も求められます。
近年は、ステアリングにオーディオのスイッチなどが取り付けられ、運転中にステアリングから手を離すことなく操作できるものを増えています。
PIUSのステアリングホイールは、警告ホーンのみ付いているシンプルな構造ですが、分解組み立てを行う際に基本的な取り付け構造を押さえたものとなっています。
また、PIUSのステアリングはドライバーがシート(後述)に座って運転する姿勢をとった時に、自然で違和感のない位置となっています。
16.ステアリングシャフト
ステアリングシャフトは、シャフトに取り付けられたステアリングホイールからの回転を、ステアリングギアボックス(後述)に伝える部品です。
ステアリングから回転力が伝えられるため、捻りに強い素材や太さなどが求められます。
また、ステアリングシャフトにはステアリングホイールとステアリングギアボックスの取り付け位置を最適化するため、ユニバーサルジョイントが取り付けられ回転軸方向を変えている場合もあります。
PIUSのステアリングシャフトは2分割となっており、中間にユニバーサルジョイントが設けられ、角度が変化していますが、ドライバーの足元空間の確保及びステアリング位置の最適化を行っています。
17.ステアリングギアボックス/ステアリングタイロッド
ステアリングの回転は、ステリングシャフトからステアリングギヤボックス、ステアリングタイロッドに伝えられ、タイヤの向きを変えます。
ステアリングギアボックスは、ラック&ピニオン構造で構成され、ステアリングから始まる回転運動を軸方向に変換して減速し、大きな力にしつつステアリングタイロッド(後述)に伝え操舵する部品です。
自動車では大きくて重いタイヤを操舵するために、油圧やモーターなどの力を利用しステアリングの操作力を軽くする、パワーステアリングアシスト機構が付いています。
近年の自動車は、エンジンの力を利用せず低燃費を目指す観点から、電動パワーステアリング車が増えています。
PIUSは車体が軽く、なおかつ小径で軽いタイヤ/ホイールを採用しているため、パワーステアリングを必要とせずシンプルな構造となっています。
その為、ユニットの分解・組み立ても簡単に行うことができます。
ステアリングタイロッドは、ステアリングギアボックスから伝わる軸方向の力をナックルに伝え、タイヤ/ホイールの向きを変えるための最終的な部品です。
ボールジョイント構造となっており、操舵時やサスペンションストローク時に自在に動く構造となっています。
また、ステアリングタイロッドはギアボックスにネジ構造で取り付けられているため、伸縮することができ、タイヤのアライメント調整を行うことができます。
アライメント調整することにより、走行時の安定性、タイヤの異常摩耗などを抑制することができます。
※アライメント調整
トー角:クルマを真上から見下ろしたときのタイヤの角度
キャンバー角:クルマを横からみたとき、操舵の軸(キングピン軸)の傾き角度
キャスター角:クルマを正面から見たときのタイヤの角度
PIUSではフロントタイヤのトー角を調整可能です。
オプションのPIUSアライメント調整キットにより、キャンバー角、キャスター角を調整し、走行・操舵性能の違いを体験できます。
18.アクセルペダル
このペダルを踏み込む量に応じて、エンジン(またはモーター)の回転数を制御します。
エンジンは駆動系に直結して搭載されていますので、ペダルを踏み込む量を調整することにより発進~加速~減速の車両の制御ができます。
2000年代初頭の自動車はアクセルペダルでワイヤーを引き機械的にエンジンの回転数を制御していましたが、近年はワイヤーを廃し電気的に制御しています。
PIUSはエンジンではなくモーターですが、アクセルペダルからの電気信号により回転数を制御しています。
19.バッテリー
EVに使用されるバッテリーは補機用、駆動用に分けることができます。駆動用バッテリーはエンジン車両でいう燃料です。
その違いは、補機用バッテリーは灯火類やカーオーディオ、カーナビ他、12Vで動くものに使われるのに対し、駆動用バッテリーは高電圧・大容量で駆動モーターを動かすために使用します。
エンジン車両の電装系機器と仕様を共通化するというメリットが多いため、EVの補機用バッテリーもエンジン車両と同じく12Vの鉛バッテリーを使用しており、駆動用バッテリーはエネルギー密度の高いリチウムイオン電池の使用が主流です。
補機用バッテリーを駆動用バッテリーとは別に搭載している理由として、EVのメインのスイッチをオフにしているときは、駆動用バッテリーから電気が流れないようにする安全のため、高電圧の駆動用バッテリーから補機用として12Vの電圧を作る時に発生するロスをなくしたいためなどがあります。
PIUSでは、補機用バッテリーを搭載せず、駆動用バッテリーを変換し使用していますが、これは搭載するバッテリーを増やしたくないことと、使用するのが灯火類のみという必要最小限だからできることなのです。
また、PIUSは安全に配慮し、鉛バッテリーを使用しております。
20.コントロールボックス
PIUSのコントローラーボックスの中には、モーターコントローラーのほか、コンタクタ(メインリレー)、ヒューズが入っています。
モーターコントローラーはアクセルペダルからの電気信号を入力することで、アクセルの踏込み量に応じた電流をモーターに流す制御を行っています。
どれだけアクセルを踏み込めばどれだけの加速をするかなど、制御の特性を任意に変更することも可能です。
コンタクタは、バッテリーからの電気をモーターコントローラーの駆動回路に伝えるか切るかを制御するスイッチの役割があります。
キースイッチがOFFの時はコンタクタ内の接点が離れているので電気を伝えません。キースイッチをONにすると、モーターコントローラーの制御回路に電気が伝わり、条件を満たすことによりコンタクタがONになり、駆動回路に電気を伝えます。
コンタクタと同様に回路のオン/オフを行う部品としてリレーも使われますが、コンタクタはより高い電流容量の用途で使用されます。
ヒューズは、駆動回路に何らかの要因で想定より過大な電流が流れてしまった際に、電流を遮断し回路を守る働きをします。
これらの部品には直流36Vの電圧がかかっており、走行中は大電流が流れるため、不用意に触れることが無い様に、箱(コントローラーボックス)に収納されています。
コントローラーボックスは、PIUSのフレーム最後部に、防振ゴムを介して取り付けられています。
これは、モーターコントローラーなどの精密機器を走行中の振動から守るためです。
21.モーター
直流36Vの電気を原動力として動く電気モーターで、PIUSを走行させるための原動機です。
モーターはリヤサスペンションアセンブリーに組み込まれており、モーターの回転が2組の減速ギヤを通してタイヤに伝わる構造となっています。
アクセル踏込み量に応じてモーターコントローラーがモーターの回転数を制御して、走行スピードを任意にコントロールできます。
モーターは、コイルや磁石または鉄心などで構成されていますが、モーターの方式により部品構成や出力特性が異なります。
PIUSの直流モーターは「他励磁式」という方式です。
すこし専門的な話になりますが、他励磁式とは「界磁コイル」と「電機子コイル」とが別個の電源につなぐことにより電機子電流の影響 を受けずに、界磁電流を独立してコントロールできることで、最適な力と回転速度を発揮できるというメリットがあります。
22.パーキングブレーキ/ワイヤー
パーキングブレーキは、車両を駐車させておく際に使用するブレーキで、減速時や停車時に使用する通常のブレーキとは別に備わっています。
一般的な車両では、後輪2輪に、通常のブレーキとともにパーキングブレーキの機能が組み込まれています。(ごくまれに前輪2輪の場合もあります)
PIUSでは、前後輪それぞれに通常のブレーキ装置が備わっていますが、これらとは全く別の場所にパーキングブレーキが取り付けられています。
サスペンションアセンブリーを見てみると、モーターと対になる位置に円盤状の部品があり、ワイヤーが繋がれているのが見えるはずです。
この円盤状の中にブレーキ装置が組み込まれており、ブレーキは減速ギヤに連結されています。
減速ギヤにブレーキをかけることで、結果的にタイヤの回転を固定しています。
肝心のブレーキのかけ方ですが、運転席にあるレバーを手で引き上げることで、その動きがワイヤーをとおしてパーキングブレーキへと伝わるという仕組みです。
一般車両では、電動パーキングブレーキが普及しており、レバーを人力で操作することなく、スイッチひとつでパーキングブレーキを操作できるようにもなっています。
23.シート
シート(座席)は、車両を操作するときに必要不可欠な部品です。
正しい運転姿勢でなければ、正確な運転操作ができません。
PIUSのシートは、運転する人の体形にあわせてシートの前後位置を調整できるようスライド機構が備わっています。
シートは一見単純な形状をしていますが、身体にフィットしやすさと乗り降りしやすさに配慮しています。
PIUSのシートは、FRP製の一体成形品によるごくシンプルな構造ですが、形状を工夫することで必要充分な剛性を確保し、車両の軽量化に貢献しています。
また、屋根の無いPIUSでは、シートも外観の一部と考えて、ボディーに対してスムーズに馴染む形状としています。
関連書籍
PIUSにみる⾞両⼯学概論
著者:(株)モディー・⼀関⼯業⾼等専⾨学校
- 分野:電気⼯学
- ISBN:978-4-8446-0852-3
- ページ数:230
- 定価:本体3,500円+税
- 判型:B5番
- 出版:理⼯学図書
PIUSの⽣い⽴ち
弊社ではこんな悩みをもっていました。
「お客様の夢をかたち」にしようとした時、最も重要なことはそれを創りだす⼈です。「創造性豊かな⼈材」がほしいんです。この仕事は「⾃分が主体となり、お客様の考えを⾃らの課題ととらえ、今までの常識を超えた提案をし、それを形にする」そんな考えをもって取り組まないとお客様の期待を上まわる仕事になっていきません。
世界各地で開催されるモーターショーの展⽰⾞両は、最先端技術が搭載されたものばかりです。ちょっと前までは形だけを整えればよかったのですが、今はちゃんと機能しなければいけません、まだ世の中に出回っていない未知の世界を作り上げていくのですから、ただ作ればよいというものではありません。クライアントである⾃動⾞メーカーの先には、その⾞を夢⾒て使ってみたいと思うお客様がいらっしゃいます。その期待を上まわり、そして納得していただけるモノを作りだすには「創造性豊かな⼈材は⽋かせない」のです。
そのような⼈材は⾃動⾞業界でも、モノづくり企業の中でもかなり少ない存在だと感じていました。
今まではこのような考えを持った⼈材を探してはヘッドハントしたり、弊社の取組みに賛同した⽅々がこぞって⼊社し活躍していましたが、そのような⼈材は⽇に⽇に⾒つけにくくなり、希少種となりつつあるのが実情でした。これは⾃動⾞業界だけではなくモノづくり企業全体に⾔えることでもありました。
⽇本の企業にとって必要なのは「創造性豊かな理⼯系⼈材」ではないかと考えています。⼤量⽣産するモノは⼈件費の安い海外で⽣産し、⽇本は開発に⼒を⼊れていかなければ国⼒が弱くなってしまうと危惧していました。そんな時ちょっとしたキッカケで電気⾃動⾞をベースとした「分解組⽴式電気⾃動⾞Kit PIUS(ピウス)」を開発するご縁に恵まれました。
今までお世話になってきた⾃動⾞業界や工学系人材が不足しているモノづくり企業の⼈材確保や人材育成に役に⽴つのならと考え、社会貢献の⼀環としてこのご縁を⼤切に形にしました。EV開発の先駆者として、多くの電動⾞両を研究開発し、試作してきた弊社の技術開発⼒を活かし、次世代モビリティ開発者育成のための実践型トレーニングキット「分解組⽴式電気⾃動⾞Kit PIUS」が誕⽣したのです。
「PIUS」は、Personal Interactive Utility Systemの略です。
P→Personal「⼩型で⼿軽な」=「1⼈でも組み⽴てられる」
I→Interactive 「対話・双⽅向」=「組⽴を通して⾞と対話する」
U→Utility 「役に⽴つもの」「有益性」
S→System 車両と実習に必要な各ツール、説明書、教育プログラムが一体となったシステム
これらをまとめると・・・
「⼩型で⼿軽な電気自動車:PIUSと語り合いながら、⾃動⾞の基本構造やモノづくりの原点を理解できる教育プログラム」
こんな想いでPIUSと命名しました。
2011年東⽇本は未曾有の⼤地震にみまわれ、多くの犠牲者や損害がでました。その翌年2012年、PIUSをお披露⽬したおりに⾃治体関係者の⽬に触れ、⼀関⼯業⾼等専⾨学校(以下、⼀関⾼専)の先⽣⽅を紹介していただきました。早速、PIUSを⼀関⾼専に持ち込み、先⽣⽅に紹介した際、「現在私達が当たり前のように使っているパソコンの原点はボードパソコンから始まっているんだ、このPIUSは近い将来訪れるであろう電動⾞両時代に向けて、パソコンで⾔うとボードパソコンのような役割をPIUSが担い、近未来に向けて時代を切り拓いていける要素を持った教材になりうるのではないか」と⾼い評価を受けました。
このご縁により⼀関⾼専が有する⼈材育成のノウハウ(ソフト⾯)と、弊社が有する試作・開発技術(ハード⾯)を融合し、⾞体構造、駆動、モーター、制御などを総合的に且つ実践的に学習でき、専⾨分野・学科の垣根を越え、⽇本固有のモノづくりから、次世代モビリティ開発に関する総合⼒(企画・設計・マネージメント⼒・事業構想・設計構想・技術構想をまとめられる力)や豊かな発想⼒・創造⼒を⽣み出す、ユニークな⼈材を育成できる教材を、⼀関⾼専の先⽣⽅と共に共同開発する事が決まりました。
その後、⽂部科学省地域イノベーション戦略⽀援プログラム(東⽇本⼤震災復興⽀援型)事業に申請し、岩⼿県が「いわて環境と⼈にやさしい次世代モビリティ開発拠点」プロジェクトとして国より採択されました。その中で⼀関⾼専と弊社は産学官が連携し⼈材育成に特化した取組みとして、2012年〜2017年の5ヵ年にわたり教材開発を⾏いその成果として⽣まれたのが、この『PIUS Education System』です。